ある市民の方からの秀逸な文章
3月1日子ども脱被ばく裁判不当判決に思う
―国・行政の政策の誤りを無理やりに認めるような屁理屈判決をやめろ!
2021.3.5
1.公判が始まってから数分で出てきた原告二人が「不当判決」「子どもの未来を閉ざす」
という旗を掲げました。「福島の裁判所が福島の子どもの命を守らなくてどうするんの!」という叫びがすぐ上がりました。原告(福島県内の子どもと保護者)が、事故後に適切な情報の提供がおこなわれず、無用の被曝を受けたなどとして、国と福島県を訴えていた裁判は、6年半の内容豊かな審議のあとに内容のない判決で幕を閉じました。
2.民間人の被ばく限度年1ミリシーベルト以下の教育環境で子供を教育してほしいという原告の要求は、2011年4月に文科省を訪れた多くの福島県の父兄の要求と同じものです。当時毎時10-20マイクロシーベルトもあるような、郡山市、福島市では、授業再開の為国は基準を年20ミリシーベルト引き上げました。それに対し、当時内閣官房参与であった小佐古敏荘さんは「年20ミリシーベルトは放射能業務従事者でも極めてまれにしか浴びないレベルで、子どもに浴びさせるのは親としての良心が許さない」という発言とともに内閣官房参与を辞任しました。
3.国・行政が事故前に決めていた法律と法律に基づく政策を事故後には反故にして住民に
無用な被ばくを強要したという主張は、元双葉町町長井戸川克隆さんが起こした井戸川裁判(福島被ばく訴訟)とも共通しています。
井戸川さんが指摘していますが、国は原子力緊急事態宣言を行った後、速やかに政府原子力災害対策本部を設置するとともに、現地原子力災害合同対策協議会を設置しなければならなかったのですが、設置されませんでした。来るはずの原子力防災専門官は来ませんでした。これは原子力災害対策特別措置法に定められています。JCO事故を教訓としてできた制度です。平成20年10月に行われた原子力総合防災訓練の時には、福島第一原発3号機に放射性物質放出事故発生という想定の元、原子力緊急事態宣言、政府原子力災害対策本部、政府原子力災害現地対策本部が設置されました。現地対策本部では、国、県、現地自治体(双葉町、大熊町他)が参加して、防災訓練を行いました。訓練には、東京、県庁、現地を結ぶTV会議、緊急時環境放射モニタリング訓練、緊急時放射線環境影響予測システム(SPEEDI)による訓練、住民避難誘導訓練、緊急被ばく医療活動訓練などを行いました。しかし、実際に事故が起こったとき現地対策本部は設置されず、国は現地自治体をないがしろにして、密室で自分たちに都合のいいように勝手に決めたのです。現地に相談せず、現地を調べもせず、事故前の法律を無視して、福島県だけ20ミリシーベルトを強制する政策を行ったのは人権侵害違法行為です。
4.高裁では国の責任をみとめた千葉県原発訴訟ですが、一審の地裁は国の責任を認めませんでした。刑事裁判では元東電幹部3人の責任を認めず、無罪判決が言い渡されました。国や東電幹部に過失はなかった理由として挙げられたのは「メルトダウンを引き起こすような津波が来るとは想定できなかった、国(文科省)の地震調査研究推進本部が発表した「長期評価」(東北地方太平洋側でどこでも大津波の起こる可能性がある)は学会・専門家に異論が多く信頼性が疑われていた。」というものです。公判でも多くの学者がそのように証言しました。恥知らずのニセ学者といか言いようがない!当時推進本部の主要な学者のまとめた見解に反対だった自分の論理は事実によって否定されたわけだから、なぜ間違ったのか再検討・反省するのが真の学者でしょう!間違っていた御用学者の間違いを信じた国や経営者に責任がないなどというのは、全く通用しません。そもそもいかなる工場も事故を起こさないように運営すべきで、事故が起これば取り返しがつかないような原子力発電所は、事故が起こる可能性のあるすべての原因を取り除くべく日々追及・検討すべきものです。これが、製造物責任法です。井戸川裁判では、古川元晴弁護士が合理的危機説を主張されています。
5.この間こうした裁判において、裁判官はニセ学者の証言を根拠にして国や元東電幹部の責任を免罪してきました。子ども脱被ばく裁判では、山下俊一氏が事故直後福島県各地で講演し、「被曝量1年間で100ミリシーベルト以下ならば、がんのリスクは無い。(福島市、郡山市などで、空間線量が毎時10-20マイクロシーベルトだった時に)毎時100マイクロシーベルト以下は心配ありません、マスクはいりません、子どもを外で遊ばせて問題ありません。洗濯物も外に干して問題ありません。」などの発言は、安心したいと藁にもすがりたい県民を説得するのに十分でした。嘘で安心させて、福島から避難する人を減らした功績があるのでしょう。こうした責任者(罪人)を「積極的に誤解を与えようとする意図まではうかがわれない」」多くの住民が福島県外に避難することを回避する意図があったと認めるに足る証拠はない」などと屁理屈で免罪しています。
「鼻血を出し、体調を崩した子供を避難させたかったが家族の理解が得られず避難できなかった」
避難したが、子どもはいじめにあい、住宅支援を打ち切られて、帰還せざるを得なかった」という原告の主張は一切無視されました。セシウム含有不溶性放射性微粒子による内部被ばくの危険性など、新たな研究による証言は、ICRPの古い理論を持ち出して否定されました。国民を守るための法律を守らず、国・行政の違法行為を屁理屈で弁護する判事は法律家とは呼べません。アイヒマンのようにナチ政権に盲目的に従った官僚と同じです。
6.山下俊一氏は、重松逸造氏、長瀧重信氏と続く国際原子力村(アメリカ軍産複合体、ICRP、UNSCEAR、IAEA)の日本出先機関の指導者です。長瀧重信氏は福島原発事故直後、首相官邸の要請を受けて「原子力災害専門家グループ」(8人)に入り、ここで「座長のような役割」(福山哲郎官房副長官=当時)を果たした。また厚生労働省・環境省とともに子ども被災者支援法の骨抜きに貢献した人物です。この裁判は実は国際原子力マフィアとの闘いだったのです。 以上
7.OurPlanetTV の動画をご参照ください。
原発事故後の被曝「国と県の過失を認めず」〜福島地裁
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/2549
2014年にこんなまとめをしていました。(学校20ミリシーベルト)