Our Planet TV https://www.ourplanet-tv.org/43998/より
甲状腺がんの子どもを経済支援しているNPO法人3・11甲状腺がん子ども基金は20日、甲状腺がん当事者のアンケート結果をまとめた報告書を手渡し、要望書を提出した。甲状腺がん手術を受けた大学生も同行し、患者の支援拡充や当事者の聴き取りを実現するよう求めた。
今回、同団体が手渡したのは、原発事故後に甲状腺がんと診断された26歳以下の患者を対象としたアンケート結果。同団体は2006年の活動開始から5年間で、小児や若年の甲状腺がん患者176人に療養費を給付しているが、そのうち、福島県内の70人(61.4%)と福島県外の35人(56.5%)の計105人が回答した。本人が回答したのは72人で、残り33人は保護者が回答しているという。
県外は全摘が51.7%、県内は再手術が16%
報告書では、患者の臨床状況につおてもまとめている。これによると、「県民健康調査」で甲状腺検査が実施されている福島県に比べ、福島県外の患者は自覚症状でがんが見つかるケースが多く、術式は全摘が51.7%で肺に転移している患者は15%に上っている。これに対し、福島県内では1.2%と大きな差がある。
同団体は、福島県内で見つかったがんは、甲状腺の全摘例や遠隔転移の割合が少なく、県民健康調査が早期発見・早期治療につながっていると一方、過剰診断は起きていないとして、原発事故と甲状腺がんをめぐる正確な調査研究を実現するよう求めた。県の担当者は、回答しなかった。
なお、福島県内では再手術が目立っている。再発または転移により再手術を受けている患者は16.4%にのぼり、県外より多い。この数字が、県内で多数の手術をになっている福島県立医科大学鈴木眞一教授の臨床データと大きくかけ離れているのは、途中で県外の転院した患者が多数いるためと、同団体は分析している。
福島県の甲状腺がん、集計外含め293人
今回、公表された甲状腺検査結果は、今年6月30日までの4巡目、5巡目の検査結果。4巡目で新たに3人、5巡目で3人の計6人が穿刺細胞診で新たに甲状腺がんと診断され、甲状腺がんの疑いがあると診断された患者は266人となった。全国がん登録などで把握された集計外の患者をあわせると、少なくとも293人が甲状腺がんと診断されたことになる。
また、4巡目で2人、5巡目で1人が手術を行い、全て甲状腺がんと確定した。甲状腺がんと確定した患者はこれまでに222人となる。
問題なのは、5巡目結果の公表の仕方だ。5巡目の結果で公表されたのは、人数と性別だけで、甲状腺がんと診断された3人の年齢も腫瘍径も、前回、どのような検診結果だったのかも公表されなかった。福島県立医科大学で甲状腺検査を担当している志村浩己教授は、「最近では人数が少ない場合、個人が特定されるため、公表しないようにしている。今後、人数が増えたら公表する」と釈明し、5歳の階級別結果も公表しなかった。
同検査では、事故当時5歳以下だった年代が今後、どの程度、増えてくるかが焦点となっている上、学校での集団検診を縮小する声が強まっている中で、患者の年齢は最も重要な情報となる。にもかかわらず、データの公表の仕方は、徐々に狭まっている。